舞い踊るうつくしい桜の季節、私のぱんぱんに膨らんだおなかから新しい生命が生まれてきた。その小さい人は、これまでに見たどんな人間よりも鋭く強い目で、私達をずっと、まっすぐに、見ていた。射抜くような透明なその目は、何かの始まりを、知らせているように思った。ひとめ見ると同じように見える、でも、全く別の、何かを。
そして一年、彼は二本の脚で歩き始め、次の桜を待つころ、大きな地震がすべてを揺るがした。かなしくておそろしくて、こどもを抱えて私は大きな声で泣いた。世界がかなしみの灰色に塗りつぶされたように思った。
それでも毎日、私たちの細胞は以前よりも大きな音を立ててぷちぷちぷちぷちと分裂し続けた。ふくらみ、広がり、色を鮮やかにして、高らかに歌を歌うように踊り、やがて溶けて、ひとつになっていった。それはひとつの大きなまばゆく白い光のように思えた。
私は夢中で、新しい、圧倒的な、その光の存在を確かめる手がかりを、ひとつひとつ、写真におさめて行った。見逃さないように。壊さないように。既に知っていたと思うすべてのものごとに、新しく、名前をつけ直すように。生まれたままのほんとうの色に、戻していくように。
生きたい。とにかく生きたい。死ぬまで生きたい。新しい名前を持ったあらゆるものと、愛するものたちと一緒に生きたい。太陽に喜び、風に喜び、土に喜び、水に喜び、月に祈って、毎日生きたい。生きるっていうのは、つまり、そういう営みをえんえんと生き生きと力の限り続けていくことなのではないかと思う。
この、新しい、世界で。
中川正子
津田塾大学在学中にカリフォルニアに留学。写真と出会う。帰国後山路和徳氏に師事。自然な表情をとらえたポートレート、光る日々のスライス、美しいランドスケープを撮り続ける。日本、世界を多く旅し、撮影で訪れた国は18カ国70都市以上。写真展を定期的に行い、雑誌、広告、CDジャケットなど多ジャンルで活躍中。2010年4月に男児を出産。写真集に「旅の響き」(宮沢和史氏と共著 河出書房新社刊)「ふたりぶんのしあわせ」(カサイミク氏と共著 ピエブックス刊)「通学路」(PLANCTON)などがある。
http://nakamasa.exblog.jp/
この企画は、
中川正子、プランクトン、デザイニング展 2012、albus写真ラボで運営しています。
※トークショウ開催予定!詳細はメールマガジンで。(登録されないとお送りできません)
日時:5月7日(月)〜5月13日(日)12:00〜20:00
場所:albus 2階
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最新ニュース / ショップからのお知らせ
中川正子写真展『新世界』/トークイベント「新しい世界とのかかわり方」
中川正子(写真家)×尾原史和(PLANCTON)×酒井咲帆(albus)
デザインニング展2012の開催に合わせ、albusでは中川正子写真展「新世界」を開催します。また、写真家の中川正子さん、そして「新世界」写真集をデザイン、出版まで行っているプランクトンの尾原史和さんと一緒にトークショウも行います。作品を生み出すことによっての社会とのかかわり方、自分が生きる世界をどのように捉えているのかなど、写真家、デザイナーとしてのそれぞれの立場から、自らの在り方についてお話していきます。
トークショウ
日時:2012年5月6日(日)18:00-19:30
場所:albus 2階
参加費:1500円
定員:30名 ※要予約(albusまで/info@albus.in/092-791-9335)
終了後、レセプションパーティーを開催します。
料金:1000円(drink cash on)
時間:19:30-21:00まで
※トークに来れない方も参加できます
山内悠トークショウ「夜明けの後で」
富士山の上で600日住み込み、「夜明け」の定点を追いかけた写真は、昨年に展示してもらいましたが、山内悠の生き様が面白く、彼が撮る写真はとても正直で、彼が自然を惹き付けているのではないかと思うほどでした。そんな「夜明け」を抱えて、パリフォトに向かい、アメリカのギャラリーで展示をし、そして沖縄へ。今回は山内悠が、「夜明け」という作品を作った後、これから先に何をしようとしているのかを聞いてみたいと思っています。
日時:5月4日(金)19:00〜21:00
場所:albus 2階
定員:30名(先着)
参加費(料金):1500円
雑貨のセール
春に向けて、新しい商品を仕入れるため。今、店頭にある商品は、期間限定でセールをすることにしました。ストラップやその他、ごく一部の商品をのぞきますが、それ以外は全て20%offです。ぜひこの機会に。
出張撮影_20111225_yamaguchi
saorinワークショップ
今日のワークショップは、「アコーディオンブックづくり」。いわゆるじゃばらのアルバム。
男性もステキな仕上がりに。
講師であり作家のsaorinさんは、東京からこのために来てくださいました。28日まで展覧会も開催しています。他に仕事を持ちながら、書籍を4つも書いています。写真を撮るだけではもったいないよと伝えるだけでなく、いろんな写真雑貨を手作りしてみよう!と作り方を提案されています。・・・関係ないけど、美人。
こんなのができました。
中身もgoodです。
2012年賀状ができました!
↑クリックすると大きくなります!
アルバスのオリジナルデザイン年賀状を受付開始します。撮影3カット(データ付)で基本料金8000円。撮影がなくても基本料が3000円と、とてもお得なプランですよ。今年の記念に、撮影も年賀状もアルバスまでどうぞ。
Aプラン:写真をご持参される場合 3000円+(95円*×年賀状ご注文枚数)
Bプラン:写真撮影も希望される場合 8000円+(95円*×年賀状ご注文枚数)
*切手をご自身でご準備されるはがきを使用される場合、またはハガキをご持参される場合は45円です
ご予約、お問い合わせはアルバスまで<092-791-9335>。
スタンぷらりぃって?
警固・赤坂・桜坂のスタンぷらりぃが今日から始まりました。待ちにまったスタンぷらりぃ。まずは、スタンぷらりぃのチラシの紹介。チラシは企画してくださっているクロキカオリさんが手書きで書かれた、警固・赤坂・桜坂の地図がメインに掲載されています。約60店舗以上を掲載しているのですが、全部の店舗を日々巡り、言葉を交わし、商売繁盛を祈り、その1店舗1店舗に思いをよせ、コメントを書いてくれています。読むと全てのお店を周りたくなりますよ。
そして、クロキさんのスタンぷらりぃへの思い。毎回チラシの片隅に、このチラシを手に取るだろうお客さんや、お店の方々に向けて「親愛なるあなたへ」と言葉が綴られているのです。その思いを読むと、この地域に住む方々はとくに泣いてしまうかもしれません。みんなで支え合って生きているだなぁと、改めてこのまちが好きになります。
その全文をここに掲載させていただきます。ぜひ読んでみてください。そしてあなたのまちのことを思ってみてください。
親愛なるあなたへ
こんにちは。今、これを手に取り読んでくださり、ありがとうございます。警固・赤坂・桜坂スタンぷらりぃ主催・クロキカオリと申します。私は警固に住む会社員です。仕事帰りに、また、休みの日に、この町をぷらりぷらりお散歩したり買い物したりするのが好きで、この「スタンぷらりぃ」をはじめてみました。ほんの小さなワルダクミから3回目の秋を迎え、たくさんのお店やさんのご参加・ご協力や応援をいただけている今に、心から感謝申し上げます。
このぷらりぃの地図を眺めると、昨今の「街づくり」ではよく謳われていることですが、お店同士の連携・連帯が地域の活力の鍵となっているように見えるかもしれません。でもね、私は、それは少し違うと思うのです。ぷらりぃにご参加いただく店舗様に必ず私がご提示しているキーワードのひとつに「地域・他店舗との共存共栄」ということばがあります。また、このぷらりぃを通じて他店舗とご縁ができ、横のつながりをもつことができたというお声も多数頂戴しています。
でもこれは、店舗様同士が声を掛け合い、お店を行き来することによってできることでは決してないのです。また、それは実際には物理的にとても難しく、エネルギーが要ることです。じゃあ、ごく自然に、そして小さな奇跡と呼ぶにふさわしいくらいのドラマ性も持ちながら、つながりができる仕掛けって、どんなことでしょう。
他店舗様とご縁ができた、という事例の背景には、必ずその触媒が存在します。触媒、お店とお店を行き来するもの、町の血液のような存在、それは、いわずもがな「お客様」です。あるお店でお客様に別のお店の話を聞いてみたり、教えてあげたり、そうして話に挙がったお店に行ったお客様がさきほどのお店の話をして、その店主がそのお店について教えてもらう、そんな日々のやりとりのなかで少しずつ互いに親愛なる気持ちがつのって、ある日どちらからか直接足を運ぶことが生まれる。ね。「地域に活力を」っていう気持ちで行き来するときには、こんなに親愛なる気持ちはつのらないでしょう?
私が好きな言葉に「身振りとて するとてするにあらず 身振りはこころのあまりにして」という歌舞伎俳優・坂田藤十郎の言葉があります。行動をさきに呼びかけるのではなく、こころをはぐくむこと。じゅうぶんな愛が自分の内側につのったときに、水が枡からこぼれるように、人はそれを語ったり、足を運んだりする。それがコミュニケーションの原型そのものです。「コミュニケーションしよう!」といわれても、伝えたいことなどありましょうか。思いが溢れるから伝えたいと人はコミュニケートするのです。コミュニケーションは言葉だけじゃありません。ものを作ること、なにか集めること、飾ること、店を構えることもまた、何かを伝えたいと思う心が溢れた形のひとつなのだと捉えたら、「町」といううこの人の営みは、なんて思いに満ちているのだと、愛おしく感じずにいられません。
私がぷらりぃぷらりぃとお散歩をするのは、このかけがえない、思い溢れる人の営みを享受することにほかなりません。どんなお料理を食べてどんなお酒を飲みどんな音楽を聴き、どんな会話をし、何をどんなふうに伝え共有するのか。町に並ぶお店ひとつひとつが、人生という限りある時間を誰とどのように過ごすかという、人生の過ごし方へのご提案であると感じます。そして日々の暮らしを彩るものも、誰かが思いを込めて作った手仕事のものたちで、その思いを大切に受け取り、親愛なる気持ちで日々を暮らしていきたいと思うのです。
私にもあなたにも、まだ知らない誰かにも、かけがえのない暮らしがあり、大切にしたい人がいて、有限の時間がある。なにかの機会に隣り合いすれ違うことがある瞬間には、まるで軽い乾杯程度に、それぞれのかけがえのない暮らしに、親愛なる気持ちを交わすことができますように。カルペディエム。
クロキカオリ拝
お友だちになったしるし
引越をして行かれるお友だちとの記念にと、写真を撮りに来てくださいました。アルバスでもおなじみの4人。ハイハイのときから見ていたので、なんだかだいぶん大きくなった気がします。
小さな頃のお友だちって、大きくなるとなかなか思い出せなくて。でも会いたいなって思う。いまどうしてるんだろう。
シャボン玉にまっしぐら。さっきまで眠そうだったのにいきなり大はしゃぎでこちらまで興奮してしまう。子どもが楽しんでいると、その場がぱっと明るくなるのがすごい。私も一緒に笑い転げながら夢中でシャッターをきってました。
短い時間でもラブストーリーは起こりえるのか!?
会話はできないけど、ちゃんとお互いを意識している。その素直なしぐさを大人になったら真似できないのがくやしい。
また来てね。いつでも待ってるよ。
いま、地方で生きるということ
『いま、地方で生きるということ』という、西村佳哲さん書かれた本が出版されました。面白い本をたくさん出版されているミシマ社から出ています。
この本にアルバスのことや「いつかいた場所」(酒井の写真作品)も掲載していただきました。
西村さんは地方について、こんなふうに語られています。
そこに生きる人。
どんなふうに生きていけば、その場がつくられていくか。
アルバスのこれからのことを考える上でも、とてもいい機会になりました。
この本は、アルバスでも販売しています。読む事もできますのでぜひ手に取ってください。
※本の中に掲載されている酒井の作品は、現在水戸芸術館でも展示しています。
PHOTOFES2011 作品募集 「カメラ日和×Kodak フィルム"LOVE"フォトコンテスト」
フォトコンテストでニューヨークに行けるかも!?です。
応募は無料。さらにフィルムももらえます。(店頭受付のみ)
まだの方も、またいい写真が撮れちゃって〜という方も、何度でも応募できますのでぜひ。
ネットの応募より店頭の応募がお得ですよ。
詳細はコチラ!
「カメラ日和×Kodak フィルム”LOVE”フォトコンテスト」
子どもたちの帰り道
たまに訪ねてくれる子どもがいる。寄り道を禁止している学校が多いので寄り道とは呼ばず、帰り道の報告とでも名付けておこうかな。
「今日もちゃんと学校に行って、いろいろ学んできたんだよ」という報告と、「○時に、ここ(albus)に来た」という報告(証し)にもなっている。子どもがちゃんといつもの道を通って帰って来たというのは、親や先生が監視して確認するわけにも行かず、もしそれができたとしてもとても息苦しい。親や先生から離れて、いつもとは違う大人と出会うことも、きっと子どもの学びになるはず。もちろん大人の学びにも。
この日は、アルバスの2階で開催している写真展に誘ったら、一つ一つの写真集をじっくり見てくれた。感想帳にも記帳して。(後日これを読んだ作家はとっても喜んでいました)
これからもお互い(大人や子ども、作家や観る人、etc)にとって、いい出会いを作っていきたいな。